タオに関する妄想

タオがなんだか痩せて来た。癌かもしれない。不安になって、動物病院に連れて行くと、検査ののち、医者がにこやかな顔で、やっぱり癌でしたと教えてくれた。

嘘だろと驚く自分と、やっぱりなあと感傷に耽る自分と、これで自由になれると飛び上がって開放感に浸っている自分がいる。

悲しみはほとんどない。なんだかオロオロしている。

おれだって残り少ない人生なんだ。自由気ままに暮らしたいさ。おまえの世話で人生をムダにするなんて、もう、まっぴらなんだ。ああ、よかった。

これからは、恋人と二人で楽しい人生を送るぞ。

そんなことを思っていると、急に悲しみがこみ上げて来た。心の奥底から悲鳴をあげながら悲しみが湧き上がって来た。

おいおい、タオが死んじまうんだぜ、アー、なんてことだ。

こんな世界は消えてしまえ、と叫ぶと、朝の変哲もない寝床の上で、タオが不思議そうな目をしてわたしを見ていた。