老いと病い

中島みゆきが、「歳をとるのは素敵なことじゃないですか」とむかし歌っていたが、とても素敵なこととは思えない歳になってしまった。素敵なことと思えるのは、若い人の願望なのだろうと思う。

歳をとるというのは、とてもじゃないが素敵なことなどではないのだ。

歳をとると、病が次から次へと襲いかかって来る。腰椎骨折だけでなく、持病の緑内障の定期通院で、半年ぶりにとある総合病院へ出かけた。家を出ると、なんと右膝に痛みが走るではないか。

膝の痛みは、以前からあったのだが、騙し騙しして今日まで来たのだ。山に行くときは、膝の痛みで辛い時もあったが、平地でこんなにも痛むのは初めてのことだった。

おいおい、腰が痛いだけでなく、膝までかよ。その上緑内障ときている。救いようがない。

診察を終え、支払いのためにお金を下ろそうとして、ATMの前に行くと、一人のお婆さんがATMの前に突っ立って、お金が出ないのよとうろたえている。後ろから覗くと、現金取り出し口は閉まったままである。すべてが終了した状態に見える。もう一度カードを入れてみたらいかがですか、といっても従わない。娘さんとお孫さんらしき女性二人が現れて、おばあさん何をやっているのよ、と怒った声を上げ、側からカードをもう一度差し込んだ。

画面を見て、操作を間違えたのよと娘さんがたしなめる。わたしに先に操作するように場所を譲ってくれた。

わたしがATMから現金を下ろして、後ろを振り向くと、お婆さんがじっとわたしの操作を覗き込んでいた。

この後、彼女は無事にお金を下ろすことができただろうか。おそらく何度やっても徒労に終わることだろう。そんなふうに思えてしまう。

ほんとうに歳をとるのは素敵なことではないんですよ。