サーカスを観て来た
相模女子大学グリーンホールでサーカスを観て来た。
『サンクトペテルブルク国立舞台サーカス』という名前のサーカス団だ。
私は、サーカスというものを、子供の時から今に至るまで観たことがない。だから、今回、ロシアから来たこのサーカス団のサーカスを観るに当たっては、期待のせいでかなり興奮していた。
ただ、直前になって、このサーカスは舞台の上でやるということを知ってしまった。それなら、中国の雑技団の公演と同じではないか。私は、テントで演じられるサーカスが観たかったのだ。
グリーンホールに行ってみると、やはり小さな子供たちがいっぱいいる。それと、その孫を連れた老人たちがいっぱいいた。
奥さんが恥ずかしそうに、私たち場違いのような気がしない?
孫娘の何々ちゃんを誘うんだったね、と話しかけて来た。
それに越したことはないが、孫娘は遠くにいるからしょうがないさ。
このサーカスの司会は日本人の俳優ということで、進行はとてもスムーズで滞りもない。
本物の熊はいないけれども、熊のぬいぐるみも出て来て、子供たちは大いに盛り上がる。
司会者:さあ、みなさん、大きな声で呼んでみましょう!
子供たち:はーい!
司会者:クマの何とかちゃーん!
子供たち(とじいさんばあさん):何とかちゃーん!!
演目は空中ブランコから始まって、最後の男性5人女性2人の若者によるアクロバットまでテンポよく展開される。
数多くのフラフープを同時に回す女性。
片手逆立ちの柔軟体操をする気味の悪い黒づくめの男。
天井から垂れ下がった細いカーテンを使って逆立ちや回転をする男。
早替わりのマジックをする男性と女性の二人組。
そんな演者たちが次から次へと登場して楽しい曲芸を見せてくれる。
合間合間にピエロの二人組が現れて、観客を沸かせてくれるのだ。
子供たちは大喜び。ピエロのちょっかいにも素早く反応する。
子供の脳みそは、本当に柔らかい。世間体など気にするも何も、世間体などということを知らないから、自分たちの驚きと喜びの中に、直接浸ってしまうことができるのだ。
正味1時間10分ほどで舞台は終了した。まあ、子供相手ならこれが限界だろう。
われわれ年寄り夫婦も、それなりに楽しめたというものだ。
ただ、私はテントの中の円形の土間の舞台で演じられるサーカスが観たかった。
本当の熊や虎や馬が出て来て演技をしてくれるサーカスが観たかった。
このサーカスの公演のチケットを買った時に、少しばかり勘違いをしてしまったのだ。まさか、劇場の舞台の上でやるサーカスだったとは思わなかった。
子供のころ、巡業してくるサーカスといえば、何だか怖くてわびしい雰囲気がしたものだ。
遅くまで遊んでいると「拐われてサーカスに売られてしまうよ」と親には言われていたような気がする。
スーラの絵にあるようなサーカス、中也が思い描いていたであろうようなサーカス、フェリーニの映画の中に出てくるようなサーカス。そんなサーカスが観たかったのだ。
さて、いつになったら見ることができるのだろう。
帰りに、ロビーで孫娘のために、女の子の絵が描かれている小さなハンカチを買ってグリーンホールを後にした。