傷々しい大根

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畑に行き、最後に一本残っていた大根を引き抜いてきた。

この大根は、植えてあった大根の中でいちばん小さな大根だった。最初から成長も遅く、ひょっとしたら途中でダメになってしまうかもしれないと思った時もあった。

いちばん小さな大根だったから、引き抜かれることもなく、今日まで畑に一本だけ寂しく残っていたのだ。

でも、もう、限界だ。これ以上、畑に植えておくと中にスが入ってとても食べられたものじゃなくなってしまう。その上、大根のてっぺんには大きな花が咲きそうになっていた。

それで、引き抜くことにした。

地面からかなり上まで頭を出していたのを、両手で掴むと右左に細かく揺さぶる。地面との隙間ができた頃合いを見計らって、ゆっくりと力を入れると、呆気なく大根は抜けてしまった。

あんなに細くて小さかったのに、最後に一本だけ残って、梅雨の雨の中に突っ立っていたせいなのだろうか、目の前には太くて大きな大根が現れた。

ただし、傷だらけの大根だった。表面のいたるところが、虫に齧られて小さな穴が空いている。特に痛々しかったのは、根元に二本深い亀裂が入っていたことだ。

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亀裂には、畑の土が粘っこく入り込んでいて、タワシで擦ってもなかなか取れなかった。

今、目の前に洗って土を落とした最後の大根がある。

洗ったせいで、余計傷痕が目立つ。

変な感慨だけれど、なんだか辛い人生を送らせてしまったような気持ちになってしまう。