やっと、思い出したとさ!

こんなことがあるなんて信じられないと愕然としました。

たぬき母さんのルリンが、トイレから大きな木の葉を頭に貼り付けたまま、家族みんなが揃っている部屋に現れたのは、もう半年以上前のことでした。

たぬきにとって、木の葉を頭に貼り付けるなどということは、とても恥ずかしくて信じられないことなのです。

 

部屋にいた夫のコンモイたぬきは、驚愕してソファから急いで立ち上がり、たぬき母さんの頭から木の葉を引き剥がしました。

 

これから子供を保育園に連れて行こうとしていた娘のイヤイは、目が点になって立ち上がることができませんでした。

トイレから何食わぬ顔をして大きな木の葉を頭に付けたまま出てきた母さんたぬきのルリンから、慌てふためいて父さんのコンモイが木の葉を引き剥がすのを、唖然としてジッと見つめていたのです。

 

大丈夫、汚れていないとコンモイは娘のイノイに小声で伝えました。

イノイも少し落ち着いたようでしたが、何事も見なかったかのように、目の前で起こった出来事を遮断していました。

 

たぬき母さんのルリンは、もっとショックを受けたようです。トイレから出て来た自分の頭に木の葉が張り付いていたのですから。

どう考えても、なぜ木の葉が、頭に貼り付いていたのかが分かりません。

 

ボケたわけではないのですが、周りはボケてしまったと思ってしまうかもしれません。いや、きっとボケてしまったと思っているに決まっています。

だって、いくら考えても、まったく原因が思いつかないのですから。

 

そんな風にして、時間だけが経って行きました。

ある朝、ルリンがとても嬉しそうに夫のコンモイに言いました。

分かったのよ。わたしの頭に木の葉が貼り付いていた理由が。

 

それは、こういう訳だったのです。

いつもトイレでは、大きな木の葉が母さんたぬきのルリンの頭上で揺れていました。あの日、ルリンは行かなければならな所があって焦っていたのです。

風が吹いて来て木の葉を舞い上げました。舞い上がった木の葉は、ひらひらと落ちて来てルリンの頭に貼り付きました。その時は、アレッと思ったのですが、すぐに忘れてしまったのでした。

そして、トイレから出て来たら、みんなが大騒ぎをするものだから、すっかり記憶が飛んでしまったというのです。

母さんたぬきのルリンの話は、そういうことでした。

 

父さんたぬきのコンモイは、そういうことならと思って納得することにしました。