学校帰りの道草 2
学校からの帰り道を少し外れた所に、伊予鉄道の線路が、農業用水に使われていた川を越えて続いていた。
ある夏の日だった。油ぎった川面には、キャベツか白菜の葉っぱがふわふわと漂い流れていた。
その川に架かった鉄橋の端に潜り込んで、電車の下を見たことがあった。
線路の下から頭一つ突き出して、こちらに向かって走ってくる電車を待ち構える。緊張で脂汗が噴き出してくる。直前まで、我慢して待っていようと思うのだが、怖いものだからかなり前に線路の下の空間にしゃがみ込んでしまった。
上を見上げて待っていると、電車の音がどんどん近づいて来て、ゴーッという大きな音を立てながら頭の上を通り過ぎていった。電車の下がどうなっているか見ようとしていたのだが、頭上を通過していく電車のスピードが早くて縞模様になって流れていくだけであった。
目論見は、完全な失敗だったが、ともかく走っている電車の下を、すぐ近くから見たという満足感は残った。ちょっと危険な行為だということも分かったので、同じことは二度としなかった。
伊予鉄の線路では、他にも学校帰りに、友達3人ほどで小刀を作る遊びをしたことがある。
大きくて太い釘を、どこかから探してきて、それを線路の上に置き、電車が通過するのを待つのだ。あの頃、そんな釘は、どこにでも落ちていた。
頭の中では、素晴らしく鋭利な小刀が出来上がっていたが、電車が通過した後、跳ね飛んだ釘を見てみると、なんともブサイクなひしゃげた釘になっているだけで、とても小刀とは呼べない代物に変わっただけだった。
どうしてなのか分からないが、子供達の間では、こうして線路の上に釘を置いて、電車の車輪に轢いてもらうと素敵な小刀が出来上がると信じられていた。
でも、この経験から後、もうそんなことは信じなくなった。