そうして世界は破滅してしまった
アメリカの独裁者の頭が狂ってしまった。さも、狂っていないかのように狂ってしまった。アメリカの国民も日本の首相も、ちょっと変わった実行力のあるトリンぺが大統領になったのを歓迎した。
特に日本の首相のアンポンタンは、世界に先駆けてトリンぺに謁見に赴き、その配下になることを確約して来てしまった。もちろん、本人にヤバイなという自覚はない。
北朝鮮の指導者キムポンポンは、独裁で気に食わない配下の者は、見せしめのように銃殺にしていたのだが、体制維持のために民主主義的な平和主義者を気取ることにした。
アンポンタンはキムポンポンが嫌いだ。だから攻撃一筋で、話し合いなど絶対にしない。危険な男だから会うのも怖い。
アメリカの大統領トリンペと北朝鮮のキムポンポンは、互いに口汚く罵り合っていたが、裏ではコンタクトを取って妥協点を見つけようとしていた。
共にふんぞり返った独裁者だが、アンポンタンと違って政治的な外交能力には長けていたのだ。
自称民主主義国家の首脳同士は、お互いの利害が一致して、韓国のムンジェさんの仲介のもと、首脳会談をやることに決めたのだ。
危険なオオカミが2匹、喧嘩をするのではなく話し合いをするということになったものだから、世界は喜びに沸いた。これで平和が訪れると。
気に食わないのは、アンポンタン。平和になったら、北朝鮮からの危機を訴えて政権維持を図ることができなくなってしまう。
それから、アメリカ国内の軍産複合体がこの流れを好ましくは思わなかった。なぜなら、平和であれば武器が売れないから。
アンポンタンが気に食わないのに比べて、この軍産複合体が好ましく思わなかったことは、百倍も恐ろしい事態だった。なぜなら、トランペ政権の長官たちは軍人出身者が多かったし、トランペ自身も軍隊が大好きだったのだから。
ついでを言うと、トランペのペット犬のような日本の首相アンポンタンも、自衛隊が大好きだった。
そして何より、アメリカ合衆国という国家が、戦争が大好きな国だった。自由と民主主義のためなら、どんな戦争もやったるぜというのが、アメリカの良心なのだ。
戦いは、いつも先制攻撃だった。
キムポンポンが、核開発の放棄を決めたので、トランペは首脳会談に応じることにした。
会談は友好的雰囲気の中で行われ、会談の終了後、首脳2人が並んで、共同コミュニケを発表した。
北朝鮮に対する制裁は解除し、体制の維持を保証する。アメリカは、北朝鮮の発展のために今後20年間に渡って経済的援助を行う。両国は、相互に交流を密にして、今後ますますの友好を深めていくものとする。
そして、互いに抱擁を交わして会談は成功裡に終わった。
それから、1週間が経った、ある朝、トランペがテレビを通じて声明を出した。
北朝鮮のキムポンポンは、首脳会談での合意を反故にして、密かに核開発を続けており、情報によると、この数日、我が国に対してICBMを発射する準備をしているというのだ。だから、致し方なく、先ほど、北朝鮮に対して核攻撃を命じたと、悲痛で卑猥な声で宣言した。
その後の展開。
アンポンタンが、これで拉致家族問題が消し飛んだと喜ぶ。
北朝鮮が反撃して、10数発の核弾頭が、沖縄と横須賀とアメリカ西海岸のロサンゼルス、サンフランシスコ、東海岸のニューヨーク、ワシントンに向けて打ち出された。
自衛隊は反撃して撃ち落そうとしたが、とても間に合わなかった。
沖縄の嘉手納基地のある周辺が廃墟となり、横須賀が全滅した。ロサンゼルスとサンフランシスコも全滅し、ニューヨークとワシントンにも核弾頭は到着して2都市ともに廃墟となってしまった。
アメリカ軍の猛反撃のせいで、北朝鮮の国土では至る所でキノコ雲が湧き上がることになってしまった。この時点で、国家としての北朝鮮は消滅してしまった。キムポンポンの行方も分からなくなってしまった。恐らく、核攻撃のせいで灰となってしまったのだろう。
アメリカも無事ではいられなかった。都市が4つも壊滅的な攻撃で廃墟となり、100万人を超える死者が出たので、国内はパニック状態に陥り、国家としての機能は当面麻痺してしまったのだ。
日本はというと、まるで想定外の被害を被ったとでもいうような政府の態度だったが、溢れる死者と難民と交通網の麻痺、流通網の破壊によって食料の運搬も不可能となった。被害者の救出もできず、なおかつ、病院も壊されたせいで運び込まれた患者の手当もできない状態に陥ってしまった。医師もかなりの数が犠牲となった。
食糧は不足し、疫病が蔓延して阿鼻叫喚の様相を呈したが、アンポンタン内閣は、成す術もなくただ茫然自失の体を晒すのみであった。
核爆発のせいで、放射性物質が世界中に拡散され大気中の放射線量は驚くほど上昇してしまった。
おそらくは近い将来、人類は放射能に蝕まれてこの地球上から姿を消してしまうことになるのだろう。
妄想をほしいままにしているうちに自分が恐ろしくなってしまった。このような破滅的な展開にならないように、アメリカと北朝鮮の首脳会談が成功することを心から願う。