取り違えられた赤ん坊
こんなにも残酷で悲しいことがあるだろうか。
いつだって、もう取り返しがつかなくなってから、何が起こったかが報道される。
育ての親と、その子供だと思っていた親子が地獄に突き落とされる。それも51年も経ってから。
最近は、何年かまえに、この取り違えをテーマにした映画「そして父になる」が公開されて話題になった。
この映画よりもずっとまえから、赤ん坊の取り違えというのは、何度か報道された記憶がある。
子供のころ、自分はそんな目に遭わなくてよかったと安堵したものだ。
順天堂大学は、しっかりと補償するしかないと思う。
51歳の男性が実の親を知りたいと思っていることに対して、相手の家庭の平安を壊すことになるからという理由で教えようとしない。
母親は、生まれて来た赤ん坊の血液型が合わず、不倫を疑われて夫と離婚することになった。その後、継父と再婚したが、家庭も貧しかったので、男性は高校への進学を諦めざるを得なかった。
取り違えを疑って、母親は何度も順天堂大学を訪れたのだが、その都度追い返されたという。
残酷な話だ。
両者を引き合わせるしか方法はないのではないか。こちら側の男性とその母親の家庭は破壊されしまったのだから。
そして、その原因は、すべて順天堂大学にあるのだから。
ことを荒立てることなく穏やかに済まそうとすること自体が、誤魔化しでしかない。苦しみをお互いに取り違えられた両方の家庭に与え続けるだけになってしまう。
そもそも、順天堂大学は相手の家庭に、取り違えの事実を知らせたのだろうか。そして、そっとしておいて欲しいというような返事をもらっているのだろうか。
当事者にしか分からない、ヒューマニズムでは乗り越えられないような問題が介在しているのかもしれないが……。
時間が経ち過ぎている……。