平昌オリンピックが終わって

今回の冬季オリンピックをそれほど興味を持って見たわけではない。でも、テレビを点けると、オリンピック放送をしていることが多かったので、自然といくつかの競技を見ることになってしまった。

スキーのジャンプ競技は、札幌オリンピックで日本が大活躍したこともあって、昔はテレビにかじりついて見ていた競技だ。

昨年までは、高梨沙羅がW杯で連戦連勝していて、無敵の女王のようであったが、オリンピックでは金メダルは取れなかった。テレビのインタビューなどを見ていると、彼女は、いつも「結果を出したいと思います」と追い詰められたような表情で言っていたので、そんなに思い詰めなくてもいいのになあと心配していた。

取れたメダルは銅メダルだった。でも、銅メダルで十分じゃないか。今のご時世、なんでも結果、結果と喚き立てるけれども、経済政策ではないのだから、今までの活躍だけで素晴らしいと思う。

彼女を見ていると、東京オリンピックの時の円谷幸吉を連想してしまい、心配になってくる。

スピードスケートは、もともと好きな競技だったので、これは一生懸命に見てしまった。日本は、短距離が強くて、男子500メートルはいつもメダルの可能性があったものだ。

ところが、今回のオリンピックでは、男子のスピードスケートはあまり話題にならなかった。女子のスピードスケートが、前評判がものすごくて、金メダル確実というような報道ばかりがされていた。

だから、こちらも愛国心の固まりだから、高木美帆選手や小平奈緒選手の活躍を期待して、緊張してテレビに見入っていた。実際、彼女たちがメダルを取ったときには、かなり興奮してしまった。

カーリングも、NHKがずっと放送していたので、これもいくつかの試合を見ることになった。昔は、カーリングという競技の面白さは、まったく分からなかったが、今回見ていると、それなりに面白い。特に、女子カーリングの3位決定戦でイギリスに勝ったときなどは、劇的な幕切れで、こんな終わり方もあるのだと、カーリングで初めて興奮してしまった。

というように、いろいろと、つまみ食いのように冬季オリンピックを観戦していたのだが、気になることがあった。

滑降や回転、大回転などのスキー競技はどうなっているのだということだ。オリンピックの花形ではないか。テレビでもほとんど放送されなかったようだし、話題にもなっていない。

トニー・ザイラー猪谷千春、ジャン・クロード・キリー、それからステンマルクなどという名前が懐かしい。

そんな種目で、メダルを取ることができれば最高だろうし、入賞するだけですごいことだと思う。

放送されるのは、サーカスのような新しい種目ばかりで、それはそれで面白いのだが、昔からある種目もしっかり放送してもらいたかった。

 

さて、平昌冬季オリンピックは終わってしまった。

もう、いつまでも、平昌オリンピックの日本のメダル獲得数で騒ぎ立てるのはやめにしてほしいと思う。

日本がメダルを13個取って、今までで最高の獲得数だと言う。今の日本が素晴らしいから、こんなにもメダルが取れたのだと言わんばかりだ。でも、1位の国がどこで、2位の国がどこなのか、全く報道しない。日本のメダル数が全体で何位なのかも報道しない。

過去最高で素晴らしい、とばかり浮かれ騒いでいる。

メダル数1位の国はノルウェーで39個、2位はドイツで31個も取っている。主催国の韓国は、17個で7位だ。個人資格で参加のロシアは、17個もメダルを取っている。日本は11位。

日本は浮かれすぎだろうと思う。

その上、男子フイギュアスケートで、2大会連続で金メダルを取った羽生結弦君には国民栄誉賞を授与するとのこと。もちろん、オリンピックで連続して金メダルを取ることは至難の業で、賞賛に値する。しかし、国民栄誉賞自体が、なんだかとても政治的な代物で胡散臭い。今の政府が人気取りのために便乗しようとしただけにしか思えない。

さらに、このところ、ロシアの女子フィギュア選手のザギトワに日本から秋田犬を贈呈するということが、美談のようにして報道されている。プーチンが、女子フィギュアで金メダルを取ったザギトワにBMWの高級車を贈るのは分かる。

でも、日本の秋田犬保存会か何かが、秋田犬をザギトワ人気にあやかろうとして贈るのは、なんと言えばいいのだろう。マスコミも、もう少し批判的に報道すればいいのに。日本がザギトワの金メダルに貢献したわけでもなんでもないし、当然のことながら、その逆ではもちろんない。

15歳の女の子が秋田犬を見て、ちょっと可愛いと言っただけで、大の大人たちがまるで手柄を立てるようにして秋田犬を贈ると言い出す。送られる秋田犬も迷惑な話だ。

恥ずかしくて、居心地の悪いことこの上もない。