原子力規制委員会更田豊志委員長への疑念
1月17日(水)に原子力規制委員会の第59回会議があったことが報道された。
新聞各紙は、帰還困難区域等を対象とした詳細モニタリング結果の記事を載せて、例えば、日本経済新聞は、「最も高かったのは双葉町の路上で、1時間当たり約8.48マイクロシーベルトだった。全体として減少傾向にあるという」とコメントしている。
また、更田豊志委員長の意見について、次のように紹介している。
「更田豊志委員長は第1原発事故後、空間線量や被曝(ひばく)線量に関するデータが蓄積されてきたとして、国の基準について『環境省などは、しかるべき更新をすべきだ。きちんと改めないと復興や住民の帰還を阻害する』と指摘した。」
さりげなく書いているが、復興や帰還の阻害要因になっているので、放射線被曝量に関する国の基準を、改め直さなければならないと言っているのだ。
とても気になったので、原子力規制委員会のホームページから第59回の会議議事録をダウンロードして、「帰還困難区域等を対象とした詳細モニタリング結果について」を議題としている箇所を見てみた。
さて、更田委員長の発言であるが、議事録での発言を簡潔にまとめると、次のようなものである。
「空間線量率0.23μSv/hのところに居住すると、年間の被ばく線量が1mSv/yになるというが、1μSv/hのところに居住しても、年間の被ばく線量は1mSv/y以下になる。
事故当初は実証データも少ないから、このような値が設定されることは致し方ないが、それをいつまでも改めないのは非常に大きな問題だ。科学データ、技術データに基づくものなのだからきちんと更新をするべきだ。改めるべきは改めないと、非常に帰還や復興を阻害すると思う。環境省などと連絡を取り正しい方向に進むようにしてもらいたい。」
1μSv/hの所に住んでいると、単純に計算すると年間の被曝線量は8.76mSv/yにもなってしまう。国の計算方法でやったとしても、被曝量は5.26mSv/yということになる。実証的かつ科学的なデータに基づいて1mSv/yだと言われてもにわかには信じられない。
その上、測定器を使ってモニタリングをしている業者というのは、東京電力ホールディングス株式会社だというから空いた口が塞がらない。事故を起こした当人が汚染された場所の線量を測定している。測定した値を、そのまま信じることができるのだろうか。
委員長の発言の向こうには、何よりも帰還や復興を進めることが一番大事なのだという思惑が透けて見える。
国の政策通りにことを進めようとしているのでなければありがたいのだが。