胸が痛くなる!
新宿に出た。地下通路を伊勢丹の方に向かって歩く。しばらく行くと、レリーフが施してある壁がある。ずっと昔からある壁で、当時は今のような柵はなかった。ショップも並んではいなかった。ガランとした広い通路だった。
その壁の前に、背中を通路側に向けて腰掛けている男たちが三人いた。腰掛けているといっても、狭いパイプの上なのだから、長時間は尻が痛くなるだろう。にもかかわらず、ジッと何をするでもなく腰掛けているのだ。
20年以上前に、ホームレスと呼ばれる人たちが現れた。彼らは、公園などにブルーシートで作った小屋を建てて、そこで暮らしていた。
そのホームレスの人たちが、どんどん公共の場所から追い出されていった。
新宿の西口の都庁に向かう通路からも、ホームレスの人たちはいなくなった。でも、彼らは昼間横になって寝ていることができた。
今、伊勢丹に続く地下通路のレリーフの前で、座っている人たちは、横になることができない。横になっていると、きっと追い出されるかするのだろう。
年末の新宿は、若い人たちで一杯だ。自分たちは、世界の中心にいて、世界は自分たちの周りを巡っている。拡大していく夢と希望。彼らの目には、このレリーフの前に座っている人たちの姿は、映っていない。