思い出

ジャズ喫茶『ビレッジゲート』

新宿に『ビレッジゲート』というジャズ喫茶があった。 大学に入って「自由舞台」という学生劇団に入団したころ、仲間と結構行ったジャズ喫茶だ。 『ビレッジゲート』が目的ではなく、新宿に行ったついでに、ほかに入るところもないので入るということだった…

学校帰りの道草 2

伊予鉄道のホームページに載っていた写真 学校からの帰り道を少し外れた所に、伊予鉄道の線路が、農業用水に使われていた川を越えて続いていた。 ある夏の日だった。油ぎった川面には、キャベツか白菜の葉っぱがふわふわと漂い流れていた。 その川に架かった…

学校帰りの道草 1

小学校からの帰りは、いつも何人かの友だちと寄り道をしながら帰ったものだ。コースはいろいろだったが、映画館「第一大坪座」から築港の橋を渡り、義農公園の脇を通って、小川に沿って帰って行くのが定番だった。 映画館前の本屋に立ち寄るのは、いつものこ…

教え子たちと

もう40年前になる。初めてクラスを持った。その時の生徒たちが、今でも年に1度クラス会を開いていて、愚かだった担任の私を招いてくれる。 去年は所用があって出席できなかったので、2年ぶりの再会だった。 この2年の間に、私はますます衰え体力もなくなり…

映画館「大坪座」

父親の転勤のせいで、生まれは関西なのだが小学校時代はずっと愛媛県の海に近い小さな町で暮らしていた。 町には、映画館が二つあって、古いほうを第一大坪座、新しい方を第二大坪座と呼んでいた。 あの頃、小学生は学校が許可しない映画を見てはいけないキ…

面白くない思い出

昔、エレベーターに乗ろうとしたら、初老の男性が出て来た。すれ違う前から、すぐに、その男性の社会の窓が開いているのに気づいていた。 ちょっと紳士風な男性だったので、このままその状態を告げずに立ち去るのは、恥をかかせることになると思い、あとを追…

桃の節句

今週のお題「ひな祭り」 少年はお雛様が、自分のものでなく妹のものであるのが残念で仕方がなかった。かといって、お雛様を自分のものになどできないことはよく分かっていたし、そんなことをしようとするのは、男として恥ずかしいことだと思っていた。それに…

マドロスの歌?

小学校低学年のころ、学校帰りによく口ずさんでいた歌がある。メローディーだけは鮮明に覚えていて、今でもなぞることができるのだが、なんという題名の曲なのかずっと分からなかった。 あーかい夕陽が荒野を染めて……おいらマドロス……ああ、いつになっても帰…

松前の町の少年時代

夏、学校が終わると急いで家に帰り、そのままランドセルを放り投げると、海に向かって走り出していた。母親に見つかると面倒なので、帰ってきたことも告げずに海に向かった。 松前の浜は、松林がずっと重信川河口まで続いている白い砂浜だった。自転車をこい…